研究資金を獲得したら 使い方を考える

3.研究時間の最大化を考える

研究時間の減少

研究者が実際の研究活動に十分に時間を充てられていない、という点は以前から日本の研究環境における課題の一つとされています。文部科学省による「大学等におけるフルタイム換算データに関する調査」によると、大学等の研究者が研究に充てている時間の割合は年々減少しており、最新のデータによると平成30年時点では32.9%と、調査開始以来最低となっていることがわかりました。平成14年度の初回調査に比べると、13ポイント以上と大きく減少しています。

研究時間の減少

平成14年度からの変化としては、教育活動が4.8ポイント増加、社会サービス活動(その他:診療活動等)が6.7ポイント増加と割合が大きく、その他の要素も微増となっており、結果として研究時間が圧迫されている状況となっています。
この状況を改善し、日本の研究力を向上させるための手段として、研究費を研究以外の業務の代行費用に充てられる「バイアウト制度」が取り入れられ始めています。

参考)文部科学省HP

バイアウト制度とは?

研究代表者本人の希望により、所属機関と合意をすることで、研究代表者の担っている業務のうち研究以外の業務(前述の教育活動や、それに付随する事務など)の代行にかかる経費について、研究費からの支出を可能とする制度が「バイアウト制度」です。この制度を活用することで、研究者は非常勤講師を雇用するなどして自らが担当する講義を代行してもらい、その分の時間を研究活動に割り当てることができるようになります。研究プロジェクトの進展が加速することが期待されているだけでなく、代行要員に若手人材を活用することで将来を担う優秀な人材の育成にも寄与すると期待されています。

バイアウト制度を活用するには、年間に代行できる上限や、代行にかかる料金の算定基準に関する規定を整備するなど、所属研究機関がバイアウト制度に関する仕組みを構築している必要があります。そのうえで、代行させる業務内容と必要な経費等について所属機関と合意することにより、研究代表者は費用を直接経費に計上できるようになります。なお、所属機関の判断により、研究分担者も同様にバイアウト経費を支出することが可能となります。
このバイアウト経費については、通常は競争的資金への申請時に予算として計上しておく必要があります。各事業により状況は異なりますが、多くは、期間中の事情によりバイアウト経費の支出が急遽必要となった場合に対応できるよう、変更申請を届け出ることによりバイアウト経費の支出が可能となるものと思われます。

バイアウト前 バイアウト後

文部科学省の科学研究費助成事業(科研費)においては、令和3年度よりバイアウト制度が適用されます。その他、さきがけやCRESTなども同様に令和3年度から適用が開始となるなど、令和2年10月9日の「競争的研究費に関する関係府省連絡会申し合わせ」をもとに、多数の競争的資金への適用が進められています。

参考)文部科学省HP「競争的研究費の直接経費から研究以外の業務の代行に係る経費の支出について」

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