研究資金を獲得したら 使い方を考える

2.柔軟化する科研費の使用ルール

知っているようで意外と知らない?!科研費の使用ルールについて

科研費は国内の政府系競争的資金の50%以上を占めており、日本の研究者にとっては最も身近な競争的資金と言えます。しかし前項でも述べたとおり、1課題あたりの平均配分額は年々減少を続けており、平成28年度は約212万円と、10年前の7割以下となっています。こうした環境の中でもより高い研究成果が得られるよう、科研費の使用ルールは大幅に緩和されてきています。

1)やむを得ない事由で年度内完了が困難になった場合の「繰越」制度

科研費は会計年度独立の原則のもと、各年度の研究計画に基づき研究費が支給されます。しかし、研究者の努力だけではコントロールができない「やむを得ない事由」により、研究を年度内に完了することができない場合も起こり得ます。このような場合、事前に申請を行ない承認を得ることで、会計年度独立の原則の例外として、未使用の研究費を翌年度に繰り越すことが可能です。

繰越の対象
以下の6つの繰越事由のいずれかに該当し、かつ繰越要件の全てに合致する場合に
繰越の対象となります。

Ⅰ. 繰越事由の6分類事由のより詳細な参考例日本学術振興会HP

1.研究に際しての事前調査の困難

想定外の事由で、研究方式やそれに伴う
事前調査の見直しが必要になった場合など

予備実験の条件設定が予想外に困難で事前調査に想定以上の時間を要した場合など

2.研究方式の決定の困難

想定外の事由で、新たな研究方式を採用する
ことが必要になった場合など

新たな知見を得たことによる研究方式の変更など

3.計画に関する諸条件

予期せず発生した問題を解決するまで、
研究の延期が必要になった場合など

機器の故障や研究協力者(機関)、学会等の事情など

4.資材の入手難

予期せぬ外的要因で計画通りに研究用資材が
入手できなくなった場合など

  • 世界的な資源不足
  • 業者の納期遅延
5.相手国の事情

研究に関係する相手国の想定外の事情で、
計画を延期・中断する必要が出た場合など

社会情勢の影響などから、研究協力者や機関が渡航を延期・中止した場合など

6.気象の関係

例年とは異なる気象条件により計画を
延期・中断する必要が出た場合など

例年にない豪雨、豪雪、波浪など

Ⅱ. 繰越要件

  • ・当初計画の内容と時期が明確
  • ・交付決定後に繰越事由が発生
  • ・計画の見直し、繰越が不可欠
  • ・当初計画では予想し得なかった
  • ・計画の見直しの具体的内容、見直し期間が明確化されている

参考)日本学術振興会HP

2)前倒し/次年度使用 が可能な「調整金」制度

平成23年度に基金化(※1)が導入され、年度をまたいだ研究費の活用が可能となりましたが、更なる使い勝手の向上をめざし、基金化種目以外の科研費においては「調整金」と言う制度が導入されていることをご存知でしょうか。

調整金による前倒し使用

当年度の研究が加速して予定よりも早く先に進めたい場合、申請をすることで次年度以降の研究費を前倒して使用できます。

参考)平成28 年度申請期間
7/4 ~ 9/1、9/2 ~ 12/1

調整金による次年度使用

前年度の未使用額を使用することで研究がより加速する見込みがあれば、一定の要件を満たしている場合において、申請することで未使用額が再配分されます。

参考)平成28 年度申請期限 7/4

調整金による前倒し使用 調整金による次年度使用

※1「基金化」とは?
年度にとらわれずに研究費の使用ができるように、平成23年度以降、一部の種目で基金化がすすめられています。事前の手続きなく次年度へ繰り越しでき、請求すれば前倒しも可能です。
また、会計年度による制約もなく、発注と納品が年をまたいでも問題ありません。

参考)日本学術振興会HP

3)科研費の合算による「共同利用設備」の導入

平成24 年度から、科研費の合算使用の制限が大幅に緩和されています。自分の科研費を合算することはもちろん、共用化により研究遂行に支障が出ないことを前提に、「経費支出者が同一の機関に所属していること」、「各支出者の負担割合とその合理的な根拠を明確にしておくこと」の二つの要件を満たせば、複数人で科研費を出し合うことも可能です。またその際、他の競争的資金を合算することも可能です。

今までは・・・

今までは・・・

費用を合算すれば・・・

高性能な機器が使えて、研究が更にはかどるそうだ!本当に欲しかったマイクロスコープが導入できる!他にも予算をまわせそうだ!

参考)文部科学省HP

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